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小説『日本核武装』

令和4年12月某日岸田首相の記者会見がおこなわれた。岸田首相の後部には超特大モニタースクリーンが設置されていた。首相官邸は急な招集に戸惑う報道関係者で埋め尽くされていた。事前に内容を知らされている者はいなかった。

岸田首相の記者会見が始まった。

 

「えー、今回はお忙しい中お集りいただきましてありがとうございます。従来より我が国は非核三原則のもと、核兵器の所持や配備には慎重な姿勢をとってまいりました。この度我が国の新たな国防政策に関し指針を示すべく皆様にお集りいただきました」

 

会場がどよめいた。カメラのフラッシュが焚かれた。岸田首相は続けた。

 

「ご存じのとおりウクライナ戦争はロシアの敗北となり、プーチン前大統領は某国へ亡命いたしました。ロシア連邦は新しい大統領の下、国の再建を図っておりますがしばらくは力の空白な生じ不安定な状態が続くものと思われます。隣国ロシアの動向はこれからも注視していかなければなりません。

 

フィンランドスウェーデンNATOに加盟することになるでしょう。我が国のNATO加盟はこれからの議論となります。憲法改正もこれからの議論となります」

 

突然〇〇新聞の記者が記者会見のルールを破って割って入った。

「そんなことでは、我々日本人はウクライナ戦争から何も学んでいないということではないですか」

 

「えー、そういうことではございません。我が国は我が国の領土を侵すもの、主権を犯すものを決して容認いたしません。断固戦い抜きます。諸外国は日本人を怒らせた時の恐ろしさを再認識すべきです。各国のリーダーは我が国を見くびってはいけないのです。世論など一夜にして、いや一時間にして変わります。諸外国は我が国を再度進め一億火の玉状態にしないために、気を遣わなければなりません。日本人を舐めてはいけません」

 

今度は△△新聞の記者が割って入った。

「いよ、いよ、核武装ですね」

 

◇◇新聞の記者が叫んだ。

「何を言ってるんだ。非核三原則を忘れたのか?」

 

△△新聞の記者が反論する。

「この期に及んではそんなお花畑みたいなことを言っている場合じゃないだろう」

 

「なんだと?」

 

 

「皆さん、静粛に願います」 首相は窘め、そして続けた。

「我が国にとって核兵器の開発、所持、配備などは容易いことです。しかし我が国は唯一の被爆国としてそれを敢えて避けてまいりました。我が国の核武装に関しては国内世論も一定の支持があります。しかし我が国は核兵器を所持いたしません」

 

「なんなんだよ。何のために我々を集めたんだよ」

怒声が響いた。

 

岸田首相は記者会見場の後方を振り向いた。

「それではスクリーンをご覧ください。我が国は核兵器を超えるものを開発いたしました。ほぼ最終兵器と言えるものです。これが使われることがあれば一瞬にして世界は終わります」

 

スクリーンは三分割されモスクワ、平壌、北京の現在の俯瞰映像が流れた。やがて両端の二つの映像は無くなり、中央の一つだけが拡大される。映像は下降し始め地上に近づき、更に建物の窓に近づいて行った。あの独裁者の顔もはっきりと認識できるほどになった。独裁者は葉巻を咥え取り巻き連中数人と何かを話している。カメラの標準は独裁者の後頭部でぴたりと止まった。

 

「まさか」

 

会場は静まり皆が固唾を飲んだ。

 

「やめてください」

XXテレビの女性記者が叫んだ。

 

「わかりました。やめましょう」

岸田首相は了承した。記者会見場には安堵のため息が漏れ、会場全体の緊張が弛緩されていった。

 

岸田首相は会見を続けた。

「実は今からちょうど36時間前我が国が開発した最新兵器で、ヘロモゲニア星雲にある一つの惑星を木端微塵に破壊いたしました。大きさは地球とほぼ同じです。これからその映像を皆さんにご覧いただきます。私も皆さんと一緒に確認したいと思います」

 

モニター画面は地球を飛び立ちどんどんその惑星に近づいて行く。映像は惑星全体を俯瞰する状態で静止する。画面にはLIVEの文字が表示された。電波が届くまで36時間かかる。後方には他の恒星や惑星も多数見える。モニターにはカウントダウンの秒数が刻まれる。残された秒数は0に近づいて行った。突然その惑星に小さい光の矢のようなものが飛んで行った。

次の瞬間惑星は爆発し四方八方へと飛び散り、映像の画面は乱れ上下左右前方後方へと揺れる。

 

記者会見場は静けさで満たされる。

 

岸田首相は緊急記者会見を締めくくる。

「我々日本人は平和を愛する国民です。しかし国家存亡の際にはどこよりも勇敢に闘う国民でもあります。領土と主権は絶対に守り抜きます。各国のリーダーには日本と日本人を舐めるなと申し上げておきます」

 

岸田首相は一礼して記者会見場をあとにする。

 

 

 

惑星が突如として消滅した事実は確認された。今でもNASAや他の宇宙機関が調査し、世界の全天文学者が研究を重ねている。しかし未だにその惑星の爆発が人為的なものであったのか、それとも天文上のことであったのかはわかっていない。

 

〈了〉

 

 

 

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